自分たちが住む地域を愛する

福島県内全域にわたってアート事業やまちづくり事業に関わるいわき市のNPO法人Wunderground。新しく代表に就任した酒井悠太さんに、今年の事業計画と意気込みを聞いた。

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酒井 悠太さん(NPO法人Wunder ground代表)

自分たちが住む地域を愛する

いわき市最大級のアートプロジェクト「玄玄天」を主催しつつ、福島県内のアート事業のサポート、食文化の発信や地域おこしイベントを手がけるなど、幅広い活動を展開するいわきのNPO法人ワンダーグラウンド。今期から代表に就任した酒井悠太さんに、代表就任の意気込みと、今年の活動、そしてその狙いになどについてお話を伺いました。

―まずは、ワンダーグラウンドという組織について教えて下さい。日常的にはどんな取り組みをしていますか? 活動理念やコンセプト、目指しているものなどを教えて下さい。

特定非営利活動法人ワンダーグラウンド(以下わんぐら)は、福島県内の文化・芸術に関わる人材や技術、資金、情報などを有機的に結ぶための組織としての事業を展開しています。一言でいうと、いわき市を拠点に活動するアートマネジメント集団ですね。文化、芸術に関する様々なニーズを受け、例えばイベント全体をマネジメントしたり、アーティストをコーディネートしたり、イベントの運営や設営など現場の仕事に対応したり。それによって地域課題の解決に貢献できればと思っています。

わたしたちが主催する事業としては「まちなかアートフェスティバル“玄玄天”」、「人柱-HITOBASHIRA-を考える」など。共催事業としては「福島藝術計画 × ArtSupport Tohoku – Tokyo」、「はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト」の事務局を担っています。各地域や文化団体の支援事業としては「いわきオールジャンルモーターフェス」、「オカエリ夏祭りin小高」、「浜の夏祭り(久之浜花火大会)」などの事務局も担っています。

昨年、いわきの四倉地区で開催した「新町歩行者天国」では、あらたな地域づくり団体「ヨツクラムジカヘッズ」を立ち上げるまでに至りました。もともとは「いわきを遊び倒す!」をモットーとして活動してきましたが、近年はたくさんの人や団体との繋がりが生まれたこともあり、活動が広域化してきましたね。

―2016年の事業、特に成功させたいもの、特徴的なものなどを教えて下さい。

今年開催を予定している「Beer博いわき」や「新町ばぶばぶ(軽トラ市)」は、是非とも成功させたいですね。この2つの事業は、地域の同年代の人達が中心となって進めていこうと考えているものですが、やはり歳が近い人たちと一緒になって、一から「コト」を起こしていくのは楽しいし、やりがいがあります。

それと、主催事業の1つである「まちなかアートフェスティバル“玄玄天”」は、今年度、内閣府へ申請予定となっている中心市街地活性化基本計画の1つに位置づけられており、まちづくりの主要計画の1つとして地域に認められました。素直に嬉しいですね。他にも、福島県全域で実施するプログラムや、いわき市外の事業もたくさん予定しています。こちらは追って情報解禁していきますので、楽しみにしていて下さい。

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わんぐらの拠点、いわき市平の「もりたか屋」でインタビューを受けて頂いた

―酒井さんは今年度から新代表になられましたね。個人として意識されること、過去のワングラの反省点やご自身のセールスポイントなどと絡めつつ、今後の抱負などをお聞かせ下さい。

第一に、先代の代表とメンバーが達成してきた事業成果や、他団体との繋がりを無駄にすることないよう心がけたいと思います(笑)。僕が代表になったことでわんぐらが失速するようなことは避けたいですね。団体の長であることの責任を日に日に感じております。

わんぐらは「変態」の集まりで、個人個人のスキルも非常に高いチームだと思っていましたが、世の中上には上の変態がいるわけで・・・。メンバー全員の個性を十分に発揮した事業運営が出来ているかと考えると、まだまだ満足出来ないですね。真面目なこともくだらないことも、とにかく何事も本気でやりたいです。個人的にはくだらないことに力を入れていきたいですけど、わんぐらに求められているのもあると思うので、それは細々とやろうと思います(笑)。いわき市でやったことのないことは、全てわんぐらが取り組んできたい。これは、僕の中で揺るがない意気込みです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAわんぐらの中心人物である阿部峻久さん(左)と会田勝康さん(右)と酒井さんによるスリーショット

OLYMPUS DIGITAL CAMERAもともとは演劇畑。かつては俳優を目指していたという酒井さん。今年からは若手のリーダーとして、地域づくりに邁進していく覚悟だ

―震災後から、わんぐらの地元であるいわきでは、様々な文化振興、食の事業などが行われてきました。しかし一方で、文化の形成には時間もかかりますし、予算ありきの事業もあります。実際に現場で関わってこられて、いわきの変化を感じることはありますか?

震災後、加速的にたくさんのことが進みましたよね。僕自身もまちづくりに携わるようになったのは震災後からで、今でも全ての事業を把握することはできていないです。どのフィールドにおいても助成金や補助金が切れたらさようならって感じで、都会のコンサルが食い散らかしていった現状をちらほら耳にします。

ですが、そのたくさんの中から生き残って事業を続けている所には、必ず“本気”の人がいます。そして、そういう人ってやっぱり話しても面白い。コトっていうのは、人によって成り立っているなぁって常々思います。

各々の到達点っていうのもあると思いますけど、地域に根ざしていくものをたった数年で成し遂げるっていうことにおこがましさを感じたりもします。相対的な評価というのはあるのでしょうけど、まずは死ぬまでやってみないと。そして、どこでも担い手の問題ってあるはずですけど、事業を始めた人がいなくなったら終わってしまう、失くなってしまうものなんて意味ないじゃないですか。世代を超えて繋げていくものって事業だけじゃなく、人もなんですよね。

今のいわきは、生き方の基準を少しだけ変えるだけで面白い人に出会える地域になったと思います。もしかしたら、これまでもそうだったのかもしれませんけど、何かを本気で始める時に応援してくれる人がいる。これ、簡単なようで結構難しいですよね。類友じゃないですけど、そういう人たちがつながる・つなげることで絶対力になりますよ。

正直、若い頃は好きになれない街でしたけど。でも、それは自分自身の問題であっただけで、今は仲間にも恵まれ、いわきでどう楽しく生きていくか考えるようになりました。

―震災後の福島では、分断を乗り越えるための「文化による対話」が求められているような気がします。改めて「震災後の福島」で、わんぐらがどのような役割を果たしていきたいですか?

まだまだ“難しい”状況が続いていると思いますが、その硬直している一見タブーとも言える領域を突破していくチャレンジを続けることは大切だと思っています。そこで、文化や芸術の力を活用した身体感覚の対話が有効だというのは、これまでわんぐらが参加してきた事業の中でも大いに感じることができました。

忘れ去られた地域の魅力や福島の誇りを誰もが知覚できる状態にして、多くの人々に提示できるような活動をすること、それがわんぐらの役割だと思います。言葉にすると固い表現になりますが、要は自分たちが住む地域を愛するってそういうことですよね。都市部のニーズを満たすことが地域のアイデンティティの大部分を占める、そんな地域はつまらないし、いろんな意味で続かないですよね。

消費されるだけの事業やどこかの真似ごとになってしまうだけの活動は面白くありません。“福島じゃないとできない” や “福島だからできる”。福島を、いわきを、日本で一番楽しい地域にするぐらいの気持ちで、今後も活動していきたいです。

 

profile 酒井悠太(さかい・ゆうた)
1983年、福島県いわき市生まれ。 大学進学後に劇団ギャング団を立ち上げ、いわきを中心に公演を行う。
震災後、NPO法人Wundergroundに参加。
2012年、いわきおてんとSUN(企)に入社し、福島オーガニックコットンプロジェクトに参画。
綿花栽培や自社製品のディレクションを通じて気づいた「くらしの価値」を元にやりたいこといっぱい中!

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