アーティストはきっかけに過ぎない

公式プログラム「イトナミニティ」に関わるアーティストのとっくんに、ワークショップについてお話を伺いました。とっくんが語るワークショップの極意とは。

とっくん(アーティスト)

アーティストはきっかけに過ぎない

2015年度の公式事業である「コミュニティ事業」に関わるアーティストのとっくん。現在、いわき市小名浜の下神白地区にある復興公営住宅で「ちぎり絵屏風ワークショップ」を開催しています。被害の状況も、現在置かれている状況もさまざまに異なる人たちが集まるこの場所で、とっくんはアーティストとしてどうコミュニティを再生させようとしているのか。とっくんが考える「ワークショップの極意」について話を伺ってきました。

―今回のプログラム、ちぎり絵屏風ワークショップについて教えて下さい。

一言で言ってしまえば、ちぎり絵で屏風を作るプログラム。ちぎり絵には「海灯台物語」というタイトルをつけています。いわき市小名浜の下神白地区にある復興公営住宅の集会所でワークショップを進めていて、やっと下絵が完成したところですね。私が来るのは週に1日くらいしかないのですが、それ以外は皆さんに自分たちのペースで制作して頂いています。

ちぎり絵には「自分たちの生きている物語」を描いてもらっています。物語というと、自分が生まれ育った故郷や、かつて自分が住んでいた場所、つまり「過去」を思い浮かべながら作っていくというイメージもありますが、皆さんに描いてもらうのは「今」。今現在の物語を作っていこうと思っています。この下神白から今目の前に見える風景や日常の暮らしを作品に落とし込んでいくイメージですね。

―現在、まだ下絵を描いたばかりということですが、参加している皆さんの反応はいかがですか?

皆さんノリノリで作って頂いていますよ。下絵もみんなで作りました。私が入る前から、仮設住宅のコミュニティ再生のために動いている支援団体の「みんぷく」の皆さんが住民の方々と一緒に町歩きなどをしていて、新しくやってきたこの下神白のことも、下絵の中にたくさん入れてくださっています。

やはり、創作して自分の手を動かすことで、気持ちもポジティブになっていくのだと思います。完成させるには、隣にいる人たちとコミュニケーションを取らなければいけません。一緒にモノを作る過程でたくさんのコミュニケーションが生まれていくこと、これが重要なんだと思います。

12033322_10206316311363882_1037010600_n団地の集会所ですっかり地域の皆さんに打ち解けた様子のとっくん

12048753_10206316312043899_771477574_n作品づくりにおいてアーティストとは「きっかけ」に過ぎないと語るとっくん

OLYMPUS DIGITAL CAMERA支援団体「みんぷく」の皆さんと。今回のワークショップは、みんぷくの皆さんの協力の下で行われている

―ワークショップの難しさは「個人差」があることだと思います。動機もその時のテンションもさまざまですし、作品に統一感を持たせるのは大変なのでは?

今回のプログラムが「ちぎり絵」という形式になったのは、ちぎり絵が「上手下手が出にくい手法だから」というのがあります。たくさんの人が参加するプログラムだと、どうしても人それぞれ集中の度合いも違うし、材料などにお金を使う人も入れば、まったく使わない人もいらっしゃる。ですから、そうしたところで差が生じないように、素材は古い新聞やチラシに統一しています。ルールづくり、段取りのほうが、むしろ重要かもしれませんね。

実はこの復興公営住宅は、双葉郡のいろいろな町から引っ越してきています。ですから、どうしても出身地ごとにグループを組んでしまう傾向にありました。そこで合コンみたいに席を決めて、隣の人と話さなければならない現場を作ってしまうわけです。すると、皆さんのめり込んでいくうちにコミュニケーションも滑らかになってきます。そういう「楽しい」という体験が記憶されると、日常の暮らしにもそれが滲み出てくるんだと思います。

―下神白の復興住宅には、双葉郡内の各町村の皆さんが集まっています。被害も現状も異なる中で、外から知らないアーティストがやってきて作品を作る難しさはありませんか?

少し乱暴な言い方になってしまいますが、私は「みんな同じ」だと思っています。私にとっては、皆さんは「どこどこ町の被災者」ではなく、「一緒に作品を作るおじちゃんおばちゃん」ですから。そこで被災者という色眼鏡で見ることは私はありませんね。

それに、ワークショップにありがちな「アーティスト」=「先生」にならないように注意しています。私はもともと自分のことを先生だと思っていませんし、そう呼ばれてしまうのにも違和感があります。「先生」がいると、相対するのは「生徒」ですから。一方的に教わって終わりということになってしまいます。

住宅の支援にあたっている「みんぷく」現場の皆さんにも、ぼくの考えは伝えてあって、「先生」にならないように、現場の方とのコミュニケーションも意識するようにしています。そのおかげで、皆さんにかわいがって頂き、酔っぱらったときに顔に落書きされるほど仲良くなりました(笑)

OLYMPUS DIGITAL CAMERAワークショップ直後にインタビューに応えてくれたとっくん。居住地である千葉県柏から片道2時間半の道程を毎週行き来している

―これから10月の中旬までワークショップが定期開催されていきます。今後さらに力を入れたいこと、大事にしていきたいことを教えてください。

そうですね、ひとつキーワードをあげるとすれば「自立」ということだと思います。22歳くらいからずっとワークショップに関わるようになり、自分なりにさまざまな経験をしてきましたが、何のためにワークショップをやるかといえば「自立」のためなんです。いずれは私たちが必要なくなるように。

つまり、自分たちでやる、自分たちで考える、自分たちで持続させていく、そういう環境を作るのがワークショップにおけるアーティストの役割だと思っています。「確固たる自分」が作品を作って、アーティストが前に行くというのではなく、みんなで作ることが一番。頑張ってるのはいつも現場の皆さんですよ。もちろん、最後の最後で手を加えて作品の完成度を上げるということはアーティストの仕事ですが、アーティストなんてきっかけにすぎないと思います。

―復興公営住宅の皆さんとすごくいい関係ができているようですね。

そうですね、私自身が毎回楽しませてもらっています。私は週に1度くらいしかいわきに来られないんですが、少し時間をあけて戻ってくると、素晴らしい作品ができていたりする。どうかなって心配していたのに、「うわぁ! やられた!」って、いい意味で期待を裏切られる。そんな瞬間に、この事業に関わらせてもらって本当によかったなと思いますね。

作品は10月22日までに完成する予定で、早速10月23日から市内の平地区で始まる「玄玄天」に、屏風を出展する予定です。もちろん復興公営住宅に住んでいる人たちが作るときに感じる楽しさが重要なのですが、それを作品として見て頂くことで、きっと勇気を感じて頂ける方もいるはずです。皆さんの最高の作品を、ぜひ現場で見て頂きたいですね。

 

profile とっくん
本名、竹内寿一。2010年 東京ミッドタウン・デザインハブ 第23回企画展「PACIFIC PEDAL LIFE DESIGN」、
ユニクロ「UT CANNES LIONS GRAND PRIX 2010」入賞。モノヅクリチーム「ta-re」代表。
アート、デザインの枠に捕われず「モノ」造り「コト」造りをしている。
また脱ジャンル集団「渋さ知らズオーケストラ」には美術家として参加している。全国各地でWSを精力的に行っている。