新しい価値を提示するということ

福島藝術計画×ASTTの「学校連携共同ワークショップ」で「ごみりのべ」というワークショップを展開した建築家のアサノコウタさん。アサノさんが「ごみ」に着目した理由とは?

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アサノコウタさん(建築家/デザイナー)

新しい価値を提示するということ

福島藝術計画×ASTT、2015年度の事業だった「学校連携共同ワークショップ」で「ごみりのべ」という、身の回りのゴミのなかから新しい価値を見出そうというワークショップを展開した建築家のアサノコウタさん。なぜアサノさんは「ゴミ」に着目し、それをワークショップの題材としたのか。プロジェクト全体を振り返りながら、アサノさんの建築に対する考えなどもお話頂きました。

—昨年からアサノさんは学校連携プロジェクトにアーティストとして参加しています。アサノさんのワークショップ「ごみりのべ」とはどんなワークショップなのですか? 

自分の身を置く環境を把握するためのワークショップということだと思っています。そのためにはその環境に必要なものの存在を知ることももちろん大切ですが、「不必要」とされているものの存在を知ることでも、その環境を知ることにつながります。どんなものがどんなところで「ごみ」、つまり「不必要とされているもの」に変化しているのか、それは本当に「ごみ」なのか。身の回りにあるものを日常とは違った目線で見てみることで、 新しい「価値」を見つけることができるかもしれない。

そういった目線での観察を続けていくことで、身の回りの環境にも新しい「価値」を見つけることができるかもしれません。もしかしたらできないかもしれません。それでも探してみることで新しい「価値観」を見つけるはできるはずです。だからまずはごみ拾いからでもやってみようかという企画でした。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA建築家としてもアーティストとしても幅広い活躍を見せるアサノさん

—実際に子どもたちと触れてみての感想はいかがですか?

幼稚園児の子どもたちには、お菓子の空き箱やトイレットペーパーの芯など、身の回りのものを使って住宅模型を作ってもらうワークショップを開催しました。使い捨ての廃棄物が多いことなどを知ってもらうとともに、そのパッケージの表面には多くの情報に溢れており、忘れられがちですが実はその造形そのものにも魅力があるんだと感じてもらえたと思います。そのような子どもの発想力でつくられた住宅模型はスケールなどが異なっていても空間の力強さのようなものを持っており、とても良い「建築」をつくりあげてくれたと思います。

その幼稚園児の模型を、今回は日本大学工学部の建築研究会のメンバーに協力してもらい、実際に存在する「建築」のような提案と設計を行ってもらいました。通常の設計課題とは逆の発想となり、既にダイナミックな空間構成は子どもたちによって作り上げられており、それを現実に着地させるためのプログラムやコンテクストを設定するというものです。子どもたちの思考を模型から探り、こちらもとても良いプレゼンテーションボードが完成しました。

945495_1053308254701217_4874331414489301782_n 日本大学建築学部の学生たちが子どもたちの模型をもとに「建築」としての提案をしてもらうという取り組みにも発展

1069819_1053308374701205_8097861413040621497_n作品展には個性的な「ごみりのべ」作品が展示された

—学校と美術館が連携、あるいは学校とアーティストが連携していく、そのことについては、どんなメリットがあると感じられますか?

学校とアーティストが連携すること。特にこの「おとなりアーティスト」では年度を通して定期的なワークショップを開催することで、通常のワークショップとは異なる深い議論や作品をブラッシュアップさせる過程を共有できたことがとても良かったと思います。いわき総合高校美術部のみなさんとのワークショップは、まさにその議論そのものが作品と呼ぶべきものでした。もちろんアウトプットに着地させることも重要なのですが、高校生とアーティストが「ごみ」とは何なのか? について議論する内容は、その紆余曲折も含め、高校生にも何かを感じてもらえたんじゃないかと思います。

美術館や学校からの注文などはなく、自由な議論を行わせて頂けました。いわき総合高校のワークショップの際には学校と美術館と僕とで話し合ったときに、高校生と社会が接する交わるような機会をつくることができれば良いということにはなりました。そういった意味では最終的な展示を福島市のAOZ(アオウゼ)で開催することにも大きな意味があったと思います。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA福島に根ざすなかでどのような建築を残してくれるのか、将来がとても楽しみな建築家

—アサノさんは建築家としても活躍してらっしゃいますが、建築家とアーティストと共通する役割はありますか?

共通する役割としては、新しい「価値」を社会に提示することだと考えています。美術と建築の区別としては体制や関わる人間の数、クリアにしていかなければならない問題なども異なってくるのでそのプロセスには区別が必要だと感じています。山の登り方や登る日数、ソロで登るのかチームで登るのかなど色々異なってくるんですが、見たい景色は一緒というか。

でも建築を通して多くの人間でひとつのものを作りあげる面白さは感じているので、美術の場合も自分ひとりで作品を作るというよりはワークショップや多くの人が参加することで自分も想像できないものが創造されることに魅力を感じています。

自分には何ができるのか。自分の福島における立ち位置は? とずっと考えて活動してきました。その場合、今現在の自分に何ができないのか。それをもっと知っていかなければならないと感じています。これはポジティブな意味です。社会の問題に対峙してそこに新しい「価値」を提案する、ということに似ていて、 自分と向き合い、その自分の問題を把握し、自分自身に新しい「価値」を見出さなければと思います。

そのためにも多くの方からもっともっと学ばせて頂きたいと思っています。ですから、この学校連携ワークショップでも子どもに教えるというよりも供に学ぶ姿勢で取り組んでいます。子どもたちからも沢山の新しい発想に気づかせてもらえました。

 

profile アサノコウタ(あさの・こうた)
建築家/デザイナー。BHIS(ビューティーハッピーアイランドスタジオ)主宰。
1983年福島県生まれ。2009年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修 士課程卒業。
同年より福島市で「うつくしま、ふくしま」をモットーに地域環境デザインを試みる建築以下の設計事務所「BHIS」を主宰する。
建築設計の領域に留まらず、グラフィックデザインから、プロダクトデザインやコミュニティデザインまで、
福島県という地域の中で横断的なデザ インの取り組みを行う。
プロジェクトFUKUSHIMA!では美術家中崎透と「福島大風呂敷」(2011)のディレクションなどを担当する。
2014年以降は、内装や新築住宅の設計を行い、活動の領域を広げている。
福島学院大学非常勤講師。FMポコラジオパーソナリティ。